東京高等裁判所 昭和24年(新を)3642号 判決 1950年7月19日
被告人
守屋五十一
外一名
主文
原判決中被告人守屋五十一に関する部分を破棄する。
被告人守屋五十一を懲役一年及び罰金四千円に処する。
但し、同被告人に対し本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
右罰金を完納することができないときは金五十円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
訴訟費用中原審において国選弁護人岡田邦彦に(同被告人の分として)支給した分、及び当審において国選弁護人安藤宇一郎に支給した分は被告人守屋五十一の負担とする。
被告人守屋五十一に対する本件公訴事実中後記賍物收受の点については同被告人は無罪。
被告人宮野孝の本件控訴はこれを棄却する。
当審における訴訟費用中国選弁護人田中泰岩に支給した分は被告人宮野孝の負担とする。
理由
被告人守屋五十一の弁護人安藤宇一郎の論旨について。
所論に鑑み原判決を調査すると被告人守屋は(一)木村某の依頼を引受けて賍物たるの情を知りながら自転車、「みの」、雨合羽各一点を自宅内に預り保管し、(二)ついで木村より右「みの」及び雨合羽を貰い受けた旨判示してある。即ち原判決は同被告人が賍物たるの情を知つて、これが寄託を受けた後該賍物中の二点を收受したる事実を認めて賍物寄蔵罪と賍物收受罪の二罪の成立を認め、前者につき刑法第二百五十六條第二項を、後者につき同條第一項を適用しているのである。しかしながら既に賍物たるの情を知つてこれが寄託を受けるときは、同條第二項の罪を構成するのであつて、その後該物品を收受しても別に同條第一項の罪を構成するものではない。然るに原判決が右收受の点について別に同條第一項の罪が成立すると判断し、両者併合罪の関係ありとして同法第四十五條前段、第四十七條を適用処断したのは法令の適用に誤があり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由があり、原判決中被告人守屋五十一に関する部分は破棄を免かれない。